【18日目】本日の担当者が記事を提出しなかったので新歓係が3秒で考えたネタで記事を作ってみたその2
公開日:
2022/04/09
【18日目】本日の担当者が記事を提出しなかったので新歓係が3秒で考えたネタで記事を作ってみたその2

ほんへ

ある男が大きく息を吸い込み、今まさに大きな決断をしようとしています。男には意中の幼馴染がいます。さらさらの黒髪を肩まで伸ばした、切れ長の目が印象深く美しい女です。その幼馴染に求婚しようというのです。
「僕と結婚してください。」
女はこう答えます。
「いいでしょう。......ただし、私が欲しいものを当ててごらんなさい。それまで私はずっとこの縁側で待っています。」
家に帰ると、男は何を差し出すべきか考えます。
「あの子は魚が好物だ。きっと、欲しいものは魚に違いない。」
そう思い立ち、男は市場で旬の秋刀魚を買ってきました。
「これはどうかな。」
女は答えます。
「これは私が欲しいものではありません。」
突き返された秋刀魚を食べながら、男は次に何を差し出すべきか考えます。
「そうだ、彼女に似合う着物を拵えてみせよう。」
男は見事な藍染の浴衣を持って、女の元へ向かいます。風が冷たくなっていました。あれから一カ月が過ぎていたのです。それでも女は縁側に佇んでいました。
「これはどうかな。」
冴えわたるような青は、女の凛とした雰囲気によく合いました。女は答えます。
「これは私が欲しいものではありません。」
きれいに折りたたまれた浴衣を見ながら、男は次に何を差し出すべきか考えます。
「あ、そういえば結婚指輪を渡していなかった。」
男は慌てて宝飾店に駆け込むと、永遠の輝きを放つと言われるダイヤモンドの指輪を2つ買いました。男はその足で女の元へ向かいます。
「これはどうかな。」
男は女の左手の薬指に指輪をはめました。それでも女の態度は変わりません。
「これは私が欲しいものではありません。」
家に帰ると、いよいよ男は頭を抱えました。
「じゃあ何ならいいんだろうか。」
ちらりと窓の外に目を遣ると、白い影がちらついていました。そう、雪が降り始めていたのです。男は女のことが心配になりました。
「この寒空の下でも、まだ僕のことを待っているのだろうか。」
いてもたってもいられず、男は女の元へと駆け出します。空気は身を切り裂くほどに凍てついていました。
女はやはり縁側に佇んでいました。頬は白く、唇には紫が滲んでいます。凍えるその身を温めたくて、愛しくて.....女のことで、男の頭はいっぱいになりました。
「僕の不甲斐なさでずいぶん長く待たせてしまった。すまない。」
男はそう言うと、震える女の身体を抱きしめました。女は疲れたような、呆れたような口調で言います。
「本当にあなたは不甲斐ないですね。もう雪が降る季節になってしまいましたよ。」
更に男が答えます。
「でももう大丈夫。本当に大切なものが分かったから。もう二度と君を凍えさせはしない。僕と君は、ずっと一緒だ。」
女は男の背に手を回しながら答えます。その顔には、一筋の流れが伝っていました。 「ええ、私が欲しかったものは、確かにいただきましたよ。」
その後、二人は末永く幸せに暮らしましたとさ。おしまい。

あとがき

提出物は出しましょう。

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